事業概況説明書の訂正

以前にも書きましたが、持続化給付金の添付書類の事業概況説明書の2面の月別売上が現金主義や期中現金主義で作成されていた場合にどうしても発生主義で比較したい場合があると思います。そこで、税務署に提出済の事業概況説明書を訂正する場合です。

事業概況説明書は法人の申告書の添付書類ですが、以前はその提出が任意でした。項目も多く、記入も大変でしたので、添付しないケースも少なくなかったためか、平成18年の税政改正で提出が義務化されたという経緯があります。現在では、法人税法施行規則第35条(確定申告書の添付書類)に4号「当該内国法人の事業等の概況に関する書類」として定められていますが、以前の経緯もあり、税理士の間でも事業概況説明書をどの程度詳細に記入するかはまちまちで、月別売上に記入がないケースすらあるかもしれません。

では、事業概況説明書の月別売上のみを修正した場合の取り扱いですが、いわゆる「修正申告」ではありません。修正申告というのは、国税通則法の第19条(修正申告)で定義付けられており、納税申告書を提出した者が、その申告に係る課税標準当又は税額等を修正する場合に提出できるとされています。事業概況説明書の月別売上の部分だけを修正しても年間売上が変わらない場合は、申告書自体には修正がないため、課税標準額も税額も変わりませんので、修正申告を提出できる要件には該当しないからです。従って、この場合は添付書類の差し替えということで、税務署に個別にお願いすることになると思います。

ところで、持続化給付金の添付書類の説明には「少なくとも、確定申告書別表一の控えには収受日付印が押されていること」とありますが、なぜ「少なくとも」と書いてあるかというと、事業概況説明書にも収受印を押す欄があるからです。これを裏読みすると、「事業概況説明書は収受日付印がなくても(税務署に出したものでなくても)いいよ」というふうにも解釈できる気もします。なお、e-Taxを通じて申告を行っている場合は添付した事業概況説明書が税務署に提出したものであると証明することはできません。

そもそも会計や税務の世界では発生主義が正しいのは当然です。事業概況説明書の月別売上についても、発生主義で作成するのが当然なのですが、税務申告の世界では1事業年を単位で考えるため、期中現金主義という不思議なワードに基づいて月別売上が記載されていたというのが実態です。

持続化給付金の申請が月単位での前年比較で判定されるため、事業概況説明書の月別売上が突然クローズアップされているわけですが、税務申告の便宜上でその数字が違っていたものを正しい数字に直すというのは、税務署に差し換えをお願いするかどうかはあるとしても、非難されるものではないと思います。

持続化給付金だけでなく、制度融資の利用の判定で売上の下落率を判断する際にも事業概況説明書の月別売上はよく使われています。税理士も税務申告上の便宜に捕らわれず正確な書類を作成しなければと考えさせられる機会となりました。

※以上は私の個人的な見解です。

2020年6月17日持続化給付金

Posted by mizuniwa